どこからお話(言い訳)したらよいのかわからないのですが、
「Leica MP 0.72(ライカMP)ブラックペイント」を入手しました。
最後のフィルム機、ついにここへたどり着きました・・・もう最後、これで最後です。これ以上はありませんので、フィルム機の入手はこれが最後でしょう、むしろそう思いたい・・w(機材が落ち着いたタイミングが意外と危ないという見方もできます)。
目次
最後のフィルムライカ
数年前からフィルムの供給がそろそろ危ういのではないかと言われ続けて、この2022年現在、フィルムを取り巻く環境は明らかに悪化してきて、コロナ禍で更に加速してしまったという実感があります。また世界情勢もきな臭く、悠長にフィルムを作っている余裕はどこにもないという雰囲気。経済原理は理解しつつも非常に悲しい現実です。
しかしこのタイミングで最高級フィルム機を手にすることにどんな意味があるのか。単純にフィルム遊びがしだいだけなら他にも選択肢はあるし、どうしてもライカにこだわりたいとしても他に適度な選択肢はあったはずです。機種にこだわらなければ他にも色々あるじゃないか。それなのにどうしてこんなに大枚叩かなければならないのだろうか。その答えを私はまだ明確にできていません。人が合理性のみで成り立っているわけではないにしても、非常に非合理な判断だと思います。それはおそらくは人生をかけた贅沢な遊びなのだと思います。
これまでもさんざん散財してきましたが、今回はかなり悩みました。今さらこんなものを手に入れなくても十分にライカで撮影できていたし、ここまで高価なものは不要でした。正気な値段じゃない。しかし考えた末に、腹をくくりました。(まぁそこがなぜだ?って話なのでしょうが・・・)
このライカMP、実はドイツ本社でのOH品です。値段は元々、新品を超えた狂った値付け(MadなPricing)がされていましたが、流石に誰も手を付けず、セールとして値段が下がったところで入手しました。とはいえ、新品とほぼ同程度の値段、ただのアホです。シリアル的には若い番号なので、発売初期(2000年代初頭〜)に製造されたもののようでしたが、中身は部品交換を含むオーバーホール済みとなります。外観の貼り革も最新のシボ加工のものになっており、状態、見た目ともに限りなく新品に近い状態になっていました。
正直、新品在庫を選択してもよかったのですが、ひねくれているので、このOH品を選択しました。以前、ライカMPを物色中に別店舗でいくつか触らせてもらっていたのですが、備品なしでも50万近く、備品ありで状態のよいものが55万〜前後・・・もう中古でも新品に近い値段でしか出回らないのだなと理解しました。それならいっそ新品(もしくはOH品)いった方が早いと判断しました。
ライカMP 0.72の実機に触れて
さて、ここで一応の感想を述べておこうと思います。
実は以前、ライカM-Aを所持していたことがあります。これもまた最高によかった。シルバーでしたが、手触りもよく、巻き上げの感触もいい、完全機械式。たまらないものがありました。今回もそれと同等であるライカMPということで、モノとしての質感や感触は同じだと感じました。今回はブラックペイントなので、傷やスレはシルバーよりは気になるかもしれません。そこはペイントものの楽しみの一つですので躊躇せず使って行こうと思っています。私は開封して早速黒テープでシリアルと上部の「Leica」銘を黒塗りしました。
この黒テープ処理、よくライカユーザーがやりますが、私の場合は家族への対策でした。カメラ上面に大きく「Leica」と書かれてしまっていると流石に疎い家族も気づきます。
それに直前までシルバーのM4を使っていたので、シルバー(白)から黒への転換をどう説明するか(気づかせないか)も課題でした。実は購入後、シルバーのマスキングテープで全体を覆ってカモフラージュしようとしたのですが、あまりに「あからさまな状態」になったのでやめましたw。仕方ないので正直に「白いやつから同じスペックの黒に変更したので・・・」という言い方で乗り切りました笑。ニュアンスとしては同スペックの同等品と交換した的な雰囲気を出し、白い方は売却するのでお金はトントンだよ、という空気を醸して乗り切りるという、勢いだけの作戦。現状、いろいろあってうまくごまかしてしまったというのが実情です。若い方たちにはこういう不誠実な人間にはならないでほしいと切に願います。
MPの操作感
ここからが本題。ライカMPをさわって最初に気づくのは巻き上げ動作の感触。直前までこなれたM4を使っていたこともあり、若干スムーズさや機械としての滑らかさはライカM4が割とよかったかな、と思いました。ここを正直に書く人、少ない気がしますw。ただ巻きあげレバーがカチッと止まるのはMP、M-Aの方が当然心地よいと思います。それにM4は巻き上げレバーにプラスチックがついているのでその影響もあるかもしれません。M-Aを使っていた頃も直前にM4を使っていたので、指で金属製レバーの先端に触れるときの硬さを感じましたが、これは慣れの問題だと思うので、デメリットとして指摘する点でもないとは思います。
シャッター音について。ライカユーザーはすぐこういうこと言い出すので面倒だなとも思いますがw、私はそこまで気にしません。確かに途中でNikon機とか一眼レフを使ってシャッター音の大きさに閉口したこともあるのでライカに毒されているのかなとも思いますw。
さてMPのシャッター音ですが、今のところ少し硬い感じもします。これもM4の方がこなれていたかなぁ・・どうだろう。直前に使っていたライカM4は未調整個体でしたが、MPはOH済みとはいえ、しゃきっとした音がします。M4の方がこなれたパシャっ(シャカっ)という感じを含んだ音のように思いました。M3は店舗で触ったことある程度ですが、おそらくシャッターはM3〜M2あたりがマイルドな気がします。以前、未整備のM2を使っていましたが音がマイルドだと感じました。その後、M5もわりとマイルドな感じがしました。ミント・コンディションのM6もわりとよかったので、これは個体によるのかもしれない(M6と同時期にM-Aに触れたときは同程度の感触でした)。ある程度使い込むことで変わるような気もします。ただしこれも気になるレベルではなく個人のなんとなくの感想。このMPも機械の心地よい音、感触がします。巻き上げるときの感触はたまらないものがあります。
さてそこでライカシャッター音好きに贈りますが、以下に本機、ライカMP(ドイツOH品)と、以前使用していたOH済みライカM4のシャッター音を収録したものをアップいたしました。気になるあなたに捧げます。
全体の手触りについて。ブラックペイントは気を使いますが、やっぱりいいですね、この塗装表面の手触り。また本機は革の部分が以前のシャークスキンではなくシボ加工のものに張替え済みなので、この手触りもとてもよいです。多くの方が言うようにこちらの方が見た目、ホールド感もよいです。シャークスキンもモダンではありますが感触がサラッとしています。ペイント部は多少は気を使いつつも特に神経質になることなく使用しているため、少しずつスレはついてきたように思います。ただ通常使用であれば、よくオールドのブラックペイントにあるような真鍮の色がガビガビに見えてくるような剥げかたはしないかなと思います。巻き上げレバーの指が触れる部分は少し真鍮が見えてきつつあります。ブラックペイントはデジタルのM-P(Typ240)ぶりでしたが、やはりBPはかっこいいなと思いました。
露出計の使い勝手。これはライカM6ユーザーはよくご存知なはず。機能としては同じです。最近はノーファインダーで撮ることも多く、事前に露出が見えた方が個人的にはいいのですが、しばらく外付け露出計も付けたものの面倒になってやめました。慣れれば事前に設定を調整した上でファインダー覗いて少し絞りをいじれば適正露出になるので使い勝手がよいです。よく言われるようにある程度レンジファインダーの使用経験は必要なのかもしれません。撮影前にその場の雰囲気からSSと絞りを適度にいじった上で、ファインダーで最終確認してシャッター、という流れなので、感覚的な設定に慣れておいたほうがよいと思います。この機体は露出計センサーも交換済みなので、経年を考えるとM6より安心感はあるかなと思いました。
裏蓋のISOダイヤル。こちらよく言われるようにプラ製ですが、触ってみるとそこまでヤワな感じはしません。設定を変えるとき回しますが、若干硬いかなと思いつつ、あまり簡単に回ってしまうと使い勝手わるいので現状で正解な気がします。
あとファインダー。さすがに現行機種ということで見やすいです。整備済みなのでチリもないし、このあたりはM6以降の機種は文句ないと思います。M6の一部はハレーション起きたりしますが、それもないし、M5以前のオールドは状態によってはブライトフレームが薄かったり、スレがあったりしますので、そこはやはり現行はいいなと思いました。
フィルム巻き戻し機構について。これ、一番よく言われるポイントだと思いますが、M3、M2あたりの円形のノブ式になっています。確かにM4ユーザーだった自分にとって純粋に使い勝手でいうとM4、M6で採用されているクランクの方が巻き戻しは早そうです。ただ以前M2、M-Aを使用したときに「ありだな・・」と感じたのも事実です。よくあるようにM4巻き戻しだと巻いていて手を離すとぐるぐると戻ってしまうこともありますし、なんとなくあの小さい部品が取れたり、折れたりしてしまいそうで・・・それであればM2、M3、M-Aに採用されているこちらの方が堅牢な気がして個人的には好きかなと思います。そこは好みの問題ということで。
あと他に書いておくこと・・・。ボディは普通に使っているぶんにはそこまで傷つきやすくないなと思いました。先日旅行にも持っていき、ずっと下げてましたが、特に大きく傷がつくといったことはありませんでした(シンクロ接点の蓋をなくしましたが・・・今度買い直そう・・)。コンクリートの上に無造作に置くとかでなければ大丈夫かなと。
ちなみに本記事でライカMPについているレンズについて。このレンズはElmar 35mm F3.5 コーティングあり、になります。最近はほとんどつけっぱなしにしています。また先端についている黒いフードは、もともとElmar 50mm用の、しかも引き伸ばし機用のフード「VALOO」になります。こちら先端に絞り機構を備えていて、Elmar 50mmを使った引き伸ばし機でのプリント時に絞り操作がしやすいというものです。しかしElmar 35mmですと微妙にノブにあたって正確な設置位置ではないのですが、気にせず使用しています。35mm向けではないので良い子は真似しない方が無難です。あとケラレるかどうかとしては、ほぼケラレないという感じです。まれに周辺減光がちょっと怪しいときありますが、9割ケラレないと感じているので、そのまま気にせず常用しています。
さてまとめると、このような感じでライカMPを手に入れてしまったのですが、はやり使い勝手は最高によいなと思います。なかなか万人におすすめできるモノでもないですが、腹をくくりたい方向けかなぁw。それ以前にこのタイミングが非常に悪い。コロナや世界情勢でますますフィルム環境が悪化している点がとても気になります。国内のフィルムはもうそろそろ終わると思われますが、Kodakが頑張ってくれることを祈っています。モノクロはわりと種類もありますので、まだもう少し続くかなと想定していますが、値段はじわじわ上がっているので、厳しくなっていきますね。フィルムで残すこと、これが意味を持つのは随分先のように思いますが、私も微力ながら(とても微力・・)、このカメラで少しでも文化的な部分にコミットできていけたらと思っています。さて、次回の記事はモノクロプリントについて書こうかなと思っています。まさか自宅で暗室作業することになろうとは。
最後に以下に少ないですが、いくつか作例を。いずれもMP+Elmar 35mmにて撮影しました。最近はモノクロで撮ることが多いです。(もしかしたら、このレンズオンリーで撮影した展示に出展するやも・・・準備中です。)