今でもたまに思い出すよ、ライカM6について

なぜライカなのかとよく問われますが、その歴史とか、かつて活躍した有名フォトグラファーが残した名作とか、実際の使用感、素人でも妙に絵になる写真に仕上がるとか、いろいろあるかと思います。「手に馴染む」なんてフレーズもすでに慣用句になっていますが、自分にとって、もうコレじゃないとダメだなと思わせてくれたのはこのカメラでした。「Leica M6」についてです。

ずっと欲しいと思っていてやっと手に入れたのに、ちょっとした手違いで手放さざるを得なかったものです。

10数年に渡って販売され、玉数が多いため入手しやすい一方で、近年異常に値上がりしてしまったライカM6。少し前まで12万~18万くらいが相場でしたが、2019年現在では25万~30万くらいになってしまいました。よく言われる通りでM6はとても使い勝手がよく、みんなが欲しがるのもうなずけます。できればもう一度ほしいとは思いつつ、正直これに30万出すなら頑張ってMP買うよねとも思います。さらに残念なことに、当のライカMPが少し前まで30万あたりが相場だったのに、現在は45万~50万のラインになってしまったというね・・・(2019年現在)。もう少し市場が落ち着いてくれるとありがたいのですが・・・。

さてライカM6について。私はこれを手に入れたあたりから、ある病に冒されはじめることになります。それは「ライカ病」。かの有名な不治の病です。
そもそもの始まりは、数年前の春先。私、元々かなり凝り性でして、おそらく「物欲番長」を名乗れる程度には散財するわけなんですが(Macやらベースやら)、色々買って、それの支払いが落ち着いてきた頃に、ふらっと衝動的に何か買ってしまうという持病を元々持っていました(笑)。おそらく自己肯定感の低さから来る精神的な病だと思いますが、ある種の自傷行為な気がしています。
元々ライカM6には、憧れはあったものの、当時お金もなく、当時の相場で約15万前後。そんなにお金ないよ・・・と諦めていました。なんとなくネットでカメラをみていると、適度な状態のライカM6 TTLを見つけてしまいました。ふと気がつくと手元に・・・ほんとうに恐ろしい・・w。待ちきれずに朝から宅急便の営業所まで取りに行ってしまった。

開封してみると、取説(上記写真はコピーのダミー)こそ無かったものの外箱、化粧箱あり、ストラップは未開封未使用で、M6本体も傷の少ない美品でした。しかも今ではありえないことに16万ちょい。概観の傷といっても底蓋のシールがなく多少スレがある、電池蓋に少し塗装剥げがあるくらいで、打痕や粘つきなど大きな傷はみあたらない。然るべき方がちゃんと実用してきたという感じでとても好印象でした。動作ももちろん快調。シリアルは240万台後半でかなり最終期に近い、また露出計も正常値で稼働していました(正規の調査はしていないが、その後の使用でまったく問題がありませんでした)。
M3信奉者からすると、巻き上げの感触があまりよくないとか言われるものの、そこは長年販売されていたヒット商品だけあって、作りの良さ、使い勝手は非常によい。とにかく道具として気持ちのよいもので、ステータスアイテムとしての満足度も高かったです。下げて歩いているだけで自分がフォトグラファーにでもなったかのような、そんな気分にさせてくれました。素人なので「気分に浸れる」というのも大事な要素。趣味で使う道具は、楽器やスポーツ用品にせよ、気分が大事なわけです。(以前はエレキベースにかなりのお金をつぎ込んでいいました・・・自分の人生はこんなことの繰り返しです・・・)。

ライカM6の良さは多くの人が語っていますが、最近は若い人がフィルムカメラをはじめるにあたって購入し、ブログでレビューなど書いていたりするのを見かけます。自分も購入にあたり、多くのレビューを読みましたが、一番のおすすめは実際に自分で購入してみること。もちろん「ライカ病」にかかります(笑)。
一度、ほんとうに自分のものとしてモノを持ってみること。あの感触や撮影体験を自分のものとして体験することです。人からちょっと借りて触ったことがあるのと比べて、人生の濃度が異なります。あれ?少し大げさかな・・・(もちろん他のM3やM4、MPとかデジタルライカでもいいのですが・・)。

巻き上げを「ギリリィ・・・」とやって、すぐにレリーズボタンを押すと「チャッ」という小気味良い音がしてシャッターが切れる。あの感触、音。散歩しながら撮影のリズムに乗り始めると、その「ギリリィ・・チャッ、ギリリィ・・チャッ・・」のテンポで目の前の風景に集中しはじめる。ライカが単純に「写真を撮る」とは別の視点でも語られることが多いのは、この撮影体験によることが大きいのではないでしょうか。小気味良い音と指先にかすかに伝わる振動、自分が目の前の風景を切り取っているという主体的な感覚。中古でも値段が高かったり、現代的な視点では必ずしも使い勝手や性能がよいわけではないライカが、憧れをもって語られる秘密はこのあたりにありそうです。


Kodak カラーネガフィルム ProImage 100 35mm 36枚撮り 5本パック

当時の使用レンズは、コシナCarl Zeissの50mm/F2、あとは2本目のElmer 50mm/f3.5、そしてVoigtlander 35mm/F1.4(S.C)あたり。そしてSummicron 50mm/F2 3rd。このあたりから病状が加速していきます(自分でも本当に頭おかしいと思いますよ・・レンズ沼編は後日まとめようと思います・・)。

このあたりからモノクロフィルムも使い始めました。フィルム撮影にも慣れて、少し幅が広がりはじめた頃で、いろんなところへ持ってでかけました。近所の散歩、年始の横浜中華街散策、土日出勤したときの会社のフロア(当時は異常に忙しかった)、そして嫁と結婚前にいった岐阜県郡上八幡、名古屋など。

続いて岐阜、名古屋で撮ったもの。

M6との別れは実は自分のヘマからでした。

それまではフィルムカメラを購入するのはM6で終わりだと考えていたのですが、岐阜の帰り道、旅行先で「Summicron 50mm/F2(第3世代)」で撮った画像(当時はデジタルのα7IIで撮影)がとても良く、どうしてもデジタルライカが欲しくなり妻に相談。他に大きな支払いがたまたまなかったのと、頭金を自分がなんとかするからと説得し、なんとか許可がおりました。そして帰宅後、半月くらいで勝手に契約をすすめ「Leica M-P(typ240)」を購入。そのモノ自体のよさ、撮影体験、撮影される画像にドキドキし、気分は最高でした。自分も本物のライカオーナーになった。しかもプロ仕様の「M-P」です。心が躍ります。

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しかしここから感覚が麻痺していきます。Summicron 50mm/F2で撮影して、まったくもって満足していたのですが(この前後でO.Hに出しており状態は最高になっていたにもかかわらず)、例えば、F値が1.4だとどういう写りになるんだろう、高級レンズのSummiluxではどうなるんだろう・・・。もうサスペンスドラマで、主人公がちょっとずつ壊れていく系のアレです。翌月がボーナス月であったことも気を緩めました。気がつくとSummilux、それも値段的に購入が現実的な第2世代を物色していました。

ライカ Leica ズミルックス M f1.4/50mm ASPH. ブラック (11891C) SUMMILUX 標準レンズ

そしてレンズが手元に・・・。概観は傷多めですが、専用フード、フィルターまで付属し、レンズ面がきれいな実用品。約20万(今の相場では25~30万でしょうか)。

カード払い・・・

嫁に内緒・・・

そして20回の分割にするところを間違えて一括処理に・・・

そして分割への変更期限を勘違いで逃す痛恨のミス・・・。

そして翌月の支払いはというと、旅行代、生活費その他、レンズ代いろいろまとめて何十万・・・(ボーナスが全額なくなってしまう金額・・・)。
今もフラッシュバックするのは、嫁に土下座して謝っているところ、ボーナスが入金と同時に支払いに飛んでしまうところ、M6を泣く泣く梱包して他の人に売却しているところ・・・という一連の流れ。ちなみにこのとき、M6だけでは支払いを補填できず「α7II」も一緒に犠牲に・・・(泣)。
おそらくこれさえなければ今もM6を使っていたと思いますし、その後入手することになるM2、M4、M-A(ああぁぁぁ怖い・・計算したくない・・)などなども無かったのではないでしょうか・・・。ただしここで入手したSummilux 50mm/f1.4はレンズ状態が非常によく、その後、Leica M-Pの常用レンズとして大活躍します。今思えば、ここで落ち着いてしまえばよかったのかもしれません・・・・。

これは修羅の道。生きるってのは命(と精神)を削ること。

今の趣味のメインは写真ですが、いろいろ調べているとプロは言わずもがな、セミプロとか素人でも、結構みなさんテクニカルなことをたくさんされているんですよね。私は、オーバーな言い方だけれども、自分の中にある「美意識」みたいなものを満足させるためにやっています。自分の知り合いにも本格的に写真やってる人もいて、人のポートレートとかを撮ったりしている。彼とはお互い方向性が違うのわかってるので普段は写真の話はほとんどしませんが。写真友達、いないんだよなぁ・・・というか普通に友達がいない・・・(泣)。もうここまで来たらどうでもいいですが・・・。

写真の技術うんぬんとか、面倒なことはおいておいて、個人的にM6で撮れたお気に入りは以下。もう一度、こういうの撮りたいな。