私のSummilux遍歴

前回のズミクロン50mmの記事で、次に大物の記事を投稿すると言ってから時間がたってしまいました。その前にすこし過去の振り返りをしておきたいと思いました。Summilux(ズミルックス)についてです。

ちなみに超余談ですが、この書き出しをいま病院の家族待合室で書いています。ちょっと親が大手術中でして・・・。これで少し気を紛らわしています。記事投稿時点ではすでに退院しており一応問題はありません。人生いろいろありますね(ちなみに親の手術と同時、ほぼ同じ時間帯に嫁は産院で陣痛中という・・・そんなことある?・・)。
※以前書いたSummicron遍歴はこちら

さて本題。

Summilux(ズミルックス)。ライカレンズで一番好きなレンズです。スタンダードレンズとしてはズミクロンがありますが、ズミルックスはF1.4の大口径レンズとして、また線の細いシャープかつしっとりした写りを持つレンズとして違った魅力を持っています。

レンズの話をすると50mmかそれとも35mmかという視点もありますが、とりあえず50mmか35mmかはさておき、私が過去に使用してきたSummilux遍歴について記載します。はじめて手にしたときから、このレンズの魅力に引き込まれてしまいました。その遍歴をご紹介させていただきます。

最初はSummilux 50mm 2nd(第2世代)

一番最初に手にいれたのはSummiluxの50mm 2nd(第2世代)。はじめてのデジタルライカ、M-P Typ240を手に入れて、どうしてもデジタルでのF1.4の写りが試したくて入手しました。ここでズミルックスの描写の虜になってしまった。今思えば状態はあまりよくなく、外観の傷や塗装剥がれ、ヘリコイドは油が抜けて動きにムラがありました。しかしレンズ面はきれいでチリも少なめ、歴戦といった感じでした。これがとても良い写りでした。線の細いシャープな描写、f1.4でのとろけるようなボケ。Typ240のアンダー目の独特な陰影とマッチして、近所の住宅街を撮るだけで、それっぽく写ってしまう。外観の貫禄も、写りの良さも気に入っており、自分の結婚式でも持参して新郎席から撮影していたほどです。

しかし当時、金銭感覚が麻痺しはじめていたこともあり、オールドレンズで満足していたものの、現行レンズの写りが気になりだし・・・これはライカ沼な人には「あるある」ではないかと思いますが、結局は手放してしまうことになります。それが破滅のはじまりでした(笑)。ライカは最初オールドレンズから入ることが多いですが、一方で「現行レンズ」という言葉がとても甘美に響くときがあるものです。

自分の結婚式にて/フィルム作例
デジタルでの作例/M-P typ240、新宿
デジタル例、新宿

ちなみにこの前後にSummilux 50mm 3rdも一瞬入手したのですが、曇りレンズを掴まされ、しかも信頼しているリペアショップからもメンテを断られて、良い思い出がありません。すぐジャンクとして手放しましたが10万ほど損をしています。リペアショップの話では、このレンズは後ろ玉の貼り合わせに難があり、曇ってしまうことが多いとのこと。そうなると玉交換でしか修理できないと。リシアル後半、370、380万代あたり?かな?それ以降はまだ正規メンテでレンズ交換可能と伺いました(うろ覚えなので真に受けないでください)。2ndと同じ光学で最短70cm、しかも重さも軽く、デザインもよい、と非常に魅力的なレンズですが、自分は手を出しづらくなってしまいました。

はじめての現行レンズSummilux 50mm ASPHを手に入れる

次にやっと現行レンズである、Summilux 50mm ASPHを入手することができました。これは当時としてもかなりリーズナブルに入手。実はこのレンズ、さる有名な音楽家の方が手放したもので、直前にライカで正規メンテナンスを受けており、非常によい状態で手に入れることができました。ここで現行レンズの魔力を目の当たりにしてしまった。

このレンズ、独特のデザインも非常にかっこよく、フード組み込みのため別途フードの用意も不要ですし、フォーカスリングのスムーズさ、サイズ感、使いやすさ、そしてその開放からシャープな写りと、どこをとっても最高のF1.4レンズでした。シャープかつ甘美な描写はズミルックスの特徴ですが、デジタルだけでなく、フィルムでもとてもよく写る。それにフィルムでのボケの感じもスムーズで、フィルムの持つ味わいのようなものを堪能できます。いまだに余裕があれば手元にほしいです。唯一、好みが分かれるのはF2.8〜F4あたりでボケが星型になるところ。イルミネーションなどを撮るとボケが星型になります。これを表現にうまく落とし込めればいいのかもしれませんが、個人的によく撮れたとき背景に星型が入るのは少し気になりました。こちらも手放してしまうのですが、あとでまた入手することになろうとはw。

以下、フィルムでの作例。本来もっとシャープに写るが、どれも少し暗い場所での撮影で、個人的にはとても好きなトーンになりました。3枚目の背景が少し角のついたボケになっています。

渋谷のカフェにて/フィルム
同カフェ/暗さの中にも雰囲気を残している
Bunkamuraにて/ソール・ライター展、フィルム撮影

2本目の50mm 第2世代とSummilux 35mm 旧ASPHとクセ玉

その後、しばらくはズミクロン35mmなどの使用が続きましたが、どうしても50mmが欲しくなってしまいまいました。このあたりがレンズ沼、特にライカレンズでのそれはとても危ない。そこでいろいろと物色し、再度第2世代のSummilux 50mmを入手しました。

当時、少しずつ値段が上がってきていたため、諦めていたのですが、タイミングよく状態のよさそうなものがでていました。これもかなりの破格で入手。これが大当たりで、外観、レンズ面も非常にきれいで、リングの操作感もとてもよかったです。チリだけ少し気になったのでショップで清掃してもらいましたが「これ随分きれいですね」とリペアショップの方にも言われました。現在このレベルの状態のものは手に入らないでしょうね(おそらく30万オーバーですかね)。外観も塗装剥がれもありませんし、新品当時のツヤとか質感も残っていました。

この頃、カラーでの自家現像などもはじめており、一番写真を楽しんでいたかもしれません。ズミクロンでも十分でしたが、どうしてもf1.4が恋しくなることがありました。

大阪、御堂筋にて/フィルム、50mm 2nd
京都、下鴨神社にて/ポジフィルムにて、50mm 2nd
京都、出町柳の商店街にて/ポジフィルム、50mm 2nd

一方で持っていた現行ズミクロン35mmが、なんとSummilux 35mm 旧ASPHに化けました。これもかなりの破格での入手、しかも美品でした。ケース、フィルター、フードなどがセットで憧れのSummilux 35mmです。このバージョンのSummiluxはフォーカスシフトが悩ましいとして有名で、比較的リーズナブルに入手できる場合もありますが、昨今の高騰で割といい値段になってしまいました。私はフィルムをメインに考えていたため、フォーカスシフト問題はあまり気にならず、レンズ状態もよかったので自分にとっては最適なレンズでした。当時デジタルはM10を使用していましたが、前述のようにスナップを主体としていることもあり、デジタルでも微妙なフォーカスの厳密さなどは気になりませんでした。

以下作例ですが、1枚目はフィルムでもこれくらいシャープに写りました。また2枚目はM10で暗い場面ではありますが、Summilux 35mmのよい雰囲気が出ているかと。3枚目は西成地区ですが、ビビって遠目からの撮影。

神戸にて/フィルム、Lux35asph
神戸、北野天満宮にて/デジタルM10、Lux35asph
西成にて/デジタルM10、Lux35asph

このレンズ唯一の欠点としては、レンズが大きく重たいこと。Summicron 35mmやSummilux 50mmに慣れていると、かなり重さが違うことと、ラッパ状のプラスチックフードも大きく取り回しがよくありませんでした。一方で写りは最近の光学であるため、現行Summiluxに近い写り。正直これを安く入手できるのであれば、これで十分とも思います(そのためかえってフォーカスシフト問題がとても残念ではありますが、素人スナップではおそらく気にならないと思います)。後述する神戸、大阪、京都でも使用して、とても重宝しました。

クセ玉、球面Summilux 35mm(2nd)

さて、ここから、非常にクレイジーではありますが、なんとクセ玉の王様、Summilux 35mm f1.4 2ndを入手しました。これも今となっては入手しづらいレンズの一つ。当時、急激に評価が高まっており、値段がうなぎのぼりに。手に入れたレンズはこれまた破格でしたが(それでも20万円台半ばはしましたw)、レンズも外観も機能もかなり美品で、フィルター以外のアクセサリーが付属しており、お買い得でした。現在だと20万円台での入手は、状態を考慮すると難しいのかなと思います。

もちろんすぐにシリーズ7フィルターも入手してフル装備にしました。ちょうどこの頃、神戸、大阪、京都に旅行にいったこともあり、このズミルックス3本を持っての贅沢な旅となりました。一方で当時は「現行Summilux 35mm ASPH」にはそこまで興味を持っていませんでした。流石に値段が高いですし、当時の中古価格も50万オーバー。自分にはさすがに出せる値段ではありませんでした。これだけズミルックスのバージョンも揃ってますし、ボディもM10、M4、それにミントコンディションのシルバーのM6なども使っていたため、機材はこれで十分と思っていました。

以下京都にてフィルムでの作例ですが、開放付近での特徴的な作例です。独特のドリーミーな雰囲気でこのレンズの非常においしいところが出ている感じです。

京都、先斗町にて/球面Lux35mm+M6
同上/明暗のある状況ですが独特かつ雰囲気がある
近所の紫陽花/M10、開放付近、若干のベールが美しい

そして現行Summilux 50mm ASPHふたたび

その後、ふたたび現行Summilux 50mm ASPHの描写が気になりだしました。いつもの悪いクセです。

手持ちの美品の50mm 2ndと、重さを理由にSummilux 35mm 旧ASPHを手放しつつ、再度現行Summilux 50mm ASPHを入手しました。店舗では並品とのことでしたが、特に問題なく非常に綺麗な状態でした(フォーカスリングに1箇所、スレがありましたが)。このとき手元には、現行Lux 50mm ASPHと球面ズミルックス35mm 2ndがあり、ある意味、対象的なコンビでした。ここで久しぶりの現行50mmの甘美な描写に触れました。

個人的に現行50mmとオールドの2ndをいったり来たりしている理由は、現行は光学性能的に夜などの暗い状況での撮影でも光源があればシャープに写る点でした。オールドですと工夫すれば撮れますが周辺が荒れやすい。それが味と言えなくもないですが、ある程度暗い状況でもその場の雰囲気を残した描写がほしいわけです。以下暗い作例になりますが、ここまで暗くても開放+SS30〜60程度で、いい感じになりました。

年末のお宮参り/現行Lux50mm、フィルムにて
同上/背景ボケもいい感じに
周囲の暗い部分も雰囲気を残しつつ写っている

しかしこの前後にトラブルが頻発します。

当時、デジタルはライカM10、フィルムではライカM4と美品のライカM6を贅沢に使用していましたが、さまざまな支払いが重なり、まずはM10を泣く泣く手放すことになりました。デジタルとフィルムのどっちを残す?という状況で、長く使えそうなフィルム機を残した形です。この判断は結構むずかしいものがありました。

しかし、この状況にさらに追い打ちがかかります。残ったライカM6とライカM4が同時期に故障、OHとなってしまいました。話すと長くなるので詳細は省略。手元にカメラがない状態になってしまったのですが、M10売却の一部を使い、かろうじてライカCLを入手。現行Summilux 50mm ASPHとライカCLで撮影をしていました。またこの頃には球面Summilux 35mmも売却し、ズミクロン35mm(旧ASPH)やElmar 35mm F3.5などを入手。とにかく取り回しのよいサイズ感のレンズを求めていました。余談ですが、好きなボディとしてはフィルム機のライカCLは最高だと個人的には思います。

OHの代金がかなりかさんでしまったことで、戻ってきたライカM6は動作確認だけしてそのまま売却となりました。またその前後でSummilux 50mm ASPHも維持できなくなり売却。かろうじてフォクトレンダーのVMレンズとエルマー35mm、OH後のライカM4、あとはライカCLというラインナップで対応していました。

このときに持っていたライカM4は、有名店でのOHということもあり、金額もかなりかかりましたが、使用感は最高に仕上がっていました。しかし・・この頃は複数の支払いがかさんでしまったこともあり、手元のキャッシュ・フローはガタガタ、1ヶ月だけ使用して泣く泣くライカM4も手放すことにしました。

この間にRollei 35Sを使うなど、ライカよりは少額で入手できる機材で、どうやってフィルム撮影を諦めないかに注力していました。この前後は機材の入れ替えが早く、Nikon FM2を使ったり、いろいろ変動的でした。しかしやっぱりライカの使用感は忘れられず・・・。

そこで何を思ったのか「ライカM10-P」を購入しました。フィルムのランニンコストを下げる意図だったのですが、ただのアホです。

このM10-Pは鹿児島への旅行などで大活躍しましたが、使用レンズがライカ製ではなかったこともあり、どこかでそのことが引っかかっていました。正直「普通に写ればいいじゃん」とも思います。しかしライカボディ、ライカレンズで撮りたい、それにフィルムのあのフィーリングがほしい・・・。一方で妻が妊娠中だったこともあり、子供撮影を見据えて次の一手を模索する必要がありました。そして「M10-P」は「ライカQ2」に化けました。

自分でも狂ってるなとは思っていますが・・・こちらはいわずとしれたSummilux 28mm F1.7が付属するデジタル機です。ライカレンズで撮りたい、Summiluxで撮りたい!という欲望を満たすのにこれほど最適な機種があるでしょうか。しかもAF付き。これなら来たるべき子供の撮影もできるでしょうし、何よりM型より小型で軽量、取り回しもよい、写りについても28mmレンズ+4700万画素でまったく申し分がない(クロップなどの機能も使い勝手がよい)。

ライカQ2でアガリだ!・・・・といってアガった人を見たことはないわけですが、さらにクレイジーなことに、いきなりライカQ2を売却して「ライカM4とSummilux 35mm f1.4 2nd」を買い直すという行動に出ました。

なんなんでしょうね・・・。先の鹿児島旅行にはフィルム機のRollei 35Sを持っていったのですが、その写りがとても良くて、これがライカだったらなぁ、そんなことも頭をよぎりましたし、来るべき子供が生まれてきたとき、どういう風に写真を残したいかも考えたときに、私はどうしてもフィルムで残したいと考えました。(このあたりは少し前の記事、ライカM4購入の記事で書いています。以下作例となります。)

初夏の伊豆高原/M4+球面Lux35
クセ玉といえど絞って使えばここまで写る
夏の伊豆はまた子連れで行きたい最高の場所でした

一連の流れを書いてみて思うのは、色々わかってる方には非常にスリリングに聞こえるだろうなぁということ・・思い出しても胃が痛い。自分にとってライカM4は3台目、クセ玉の球面Summlux 35mm 2ndも2本目という・・・正直もう意地で付き合っている感じがします。

さて状態もそこそこのライカM4と、いまでは入手しづらくなっている伝説のクセ玉、球面Summilux 35mm、これでしばらく行ってみよう!めでたしめでたし・・・で終わるわけがない(笑)。ここからさらに前回の記事で書いた現行Summicron 50mmの流れになります。自分でも頭おかしいなと思いますw。

さて、オールドの球面Lux35mmと現行のズミクロン50mmでやっとバランス取れて落ち着いたね、と思いますが・・・そうなるわけがないんですよね・・・。Summilux遍歴なのに最後ズミクロンで終わるわけがないw。ここまでが導入で、次が本番なのですが、次にあのレンズを入手することになりました。つづく。

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私とライカとSummilux

おそらく、私はかなり危うい道を歩いている。

ちょっと前に書いた記事では、家庭の事情もあり、もう高いライカボディやらライカレンズやらは買えないと言った。そして最後の最後にこれだけは許してって感じでM10-Pを購入し、これで生まれてくる子供を撮るぞと息巻いていた。いまでも値段思い出すと胃が痛くなる・・・。そんな無理して買うなよ、は最高の正解ではあるが、正直ちょっとがんばれば買えてしまう程度には中堅サラリーマンをやっている。まだかろうじて子供の誕生前でもあるのでなんとか購入可能だったのもある意味不幸だ。一方で喜ばしいことに子供は順調に育っており、秋には誕生するのである。おそらくもうカメラがどうした、レンズがどうした、などとやっている余裕はないのであろう。

少しさかのぼって4月のこと。

フォクトレンダーレンズを装着したM10-Pと共に、諸用にて九州まででかけた。情勢を考慮して、そんな派手に出歩いたわけではないが、家族の用事で多少は外出したし、それなりに観光はできた。まぁせっかくきたのだからと、密は避けつつ、歩いた場所は写真を撮ってまわった。

変な撮り方をするつもりは無いが、やはり静音性の高いM10-Pは非常に使いやすい。シャッターはほとんど無音だし、撮れる絵もまさにライカの陰影。地方のバスや電車の中からも風景を撮った。やっぱりライカで撮っている。それもデジタル。この質感、この重さ。これに魅了されると人生を持ち崩すことになる、そう私のようにね(往年の洋画スターのような表情で)。とはいえ、心の隅のほんの小さな部分ではあるが、正直やっぱりライカレンズで撮りたかったなという気持ちがないでもなかったが、それでもフォクトレンダーのレンズは非常に写りがいい。使い勝手もサイズ感もとてもいい、まったく問題ない、とても気に入って使っていた。

Leica M10-P + Voigtlander 35mm f1.2 III

そこから2ヶ月ほど経つわけだけど、私の手元にはM10-Pはない。自分でも流石にちょっと頭がおかしいなと思います。じゃぁM10-Pがどうなったかというと、「ライカQ2(Leica Q2)」を購入しました。

Leica Q2
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自分でも引いてしまうのだけれど、一応の(非合理な)合理性はそこにあって、その一方で確かにフォクトレンダーレンズ1本分程度のお金の捻出が必要になったという理由もあった。とても悩ましい判断をしなければならなかった。自分を説得するための考え方はこうだ。要するに、子供が生まれてくれば移動するにも抱っこするなり、ベビーカーなりで動きにくい、夫婦で移動しててもおそらく写真など撮ってる暇があるわけがない、それであれば、AF付きのライカレンズ+ライカボディがセットになったライカQ2、それもM10-Pボディを手放すことでほとんどそのまま等価交換できる機材、これを手に入れるのはある意味正解だろうと・・・。

なるほど確かに、と自分でも思う。

ただし人間は、必ずしも合理的な解答に納得するわけではありません。ここからが本当の狂気なわけですが、実はすでにライカQ2は手元にありません。(お前、ほんとに狂ってるな・・・普通に引くわ・・)。

ライカQ2の利点を上げるのはもはや無粋というものですが、確かにあのサイズ感で、しかもまったく手抜きのない28mm Summiluxレンズと5000万画素近くの最新のセンサーがついて、その上ライカでマクロ撮影、AFもついている・・・その上、ボディの作りもよく、廉価版な感じがしないさすがの作りの良さ、高額でありながらヒット商品になったのはうなずけます。

ライカQ2を多くの有名カメラマンやガジェット系タレントが絶賛するのはとてもよくわかる。まったくスキがない。M型ライカに抱いているちょっとした不便を、Qシリーズはとてもよく埋めてくれています。いろいろ調べましたが、どこへいっても絶賛ですし、その理由も痛いほどよくわかる。私も同感だからです。

ただし、それは他にM型ライカをデジタルもフィルムも持っていた上で、ライカQ2を持っていることが前提になるような気がしました。普段、M10やフィルムのMPで撮影してて、だけれども、今回の旅行は身軽に行きたいからQ2もってこうかな、とか、今日は友人とちょっとした集まりだけど、M型もいいけど、夜の室内だし気軽にQ2でいいかな、とか。

私は幸運にも、フィルムMのボディ数種、デジタルのM-P、M10、M10-Pなど、まぁおよそ普通のサラリーマンが持つにはちょっと贅沢すぎない?と思われる分不相応なものを入手して一通り体験してしまっているので、ライカQ2を持たされても、もはや普通のデジカメでしかない。デジMのあの重さ、ある種の使いづらさも愛おしい、そしてそれ以上にフィルムMのあのシャッターフィールが恋しい。もうこれは病(やまい)の類だと思います。末期だし、病の完成形でもある。

しばらくはライカQ2でとても満足していました。シャッターの静音性、かなりの高解像度、レンズも大好きなSummilux、そしてボディがかなり軽いので普段の持ち歩きがとても楽でした。いざとなれば動画も取れる。バッテリー持ちもよいし・・・。それにクロップ機能も使い所で楽しい機能です。

ところがある日、自分の心の内に正直になってみる必要があるのではないかと思いました(←こういうところが頭おかしい気もしている)。なんだか満たされない(頭おかしいからw)。でも、わかってる、秋には子供が生まれるし、大きな機材は使えないし、アレコレ持ってたって使えない、それにAFないと子供連れでスナップなんてできないよ・・・それもわかってる、全部わかってる・・・。

自分は一番いい選択をしてる。

・・・でも、同じ子供を撮るにしても、なんとなく消費される写真じゃなくて、残る写真が撮りたい。20年、30年たったとき、俺の息子が、「親父がいい加減だったからそこまで裕福じゃなかったけど、不相応な高いカメラで俺のこと撮ってたっけ、フィルム現像まで自分でやって、随分面倒なことまで自分でやってたな、趣味はいいけど変わった親父だったな」とか、俺は息子にそんな風に思われるのかな、おそらく、そう思われたいと思っている。

何も残せやしない、人並みのものも、世間的な評価としても、何かを残せる人間じゃない。デジタルが残らないとも思わない、けどやっぱり自分はフィルムなんだと思った。理由を考えて、幼少期はフィルムが主流でその記憶があるからとか、自分が天の邪鬼だからすぐ人と違ったことしたがるとか、いろいろ考えるんだけど、

俺、フィルムで写真残したいのよ。

もう理屈でもないし、ただのわがまま、ただのブランド好きって言われても仕方ない、さんざん高いライカレンズ隠れて買って、それでも時々満足できないこともあって、やっぱデジタルの方がきれいだしなとも思ったけど、過去の写真見直してたら、たまにすごくいい写りしてるんだよ。フィルムとライカレンズ。人物は本当に限られた人しか撮らないけど、人生でほとんど唯一、親連れて旅行にいったときに旅館の部屋でライカM4のセルフタイマーで撮ったやつ、嫁と俺とオカンで3人並んでる写真とか、嫁の妹の息子さんみにいったとき、旦那さんが抱いてる写真とか、別に展示するようなもんではないけど、ぜんぜん違うんだよ。iPhoneのがきれいに写るのは自明なんだけど、それでもぜんぜん違う。

それで、俺は、これは性(さが)とか業(ごう)とかなのかもしれないけど、「ライカM4(Leica M4)+Summilux 35mm f1.4 球面/2nd」を入手しました。(えぇ!ww)え?あたま?おかしいよ?それが?

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結局、ここへ戻ってきました。

ボディはライカM4一択、もしくは次点でM2あたりで考えていたけど(35mmメインなので)、レンズは悩みました。汎用性を考えるとSummicron 35mmだけど、もう一度使ってみたい7枚玉は現在高騰している。しすぎだと思う、せいぜい25万がいいところだと思う。かといって、自分が大好きなSummilux 50mm ASPHは運良ければ30万くらいで入手できるが、50mmである点と、店舗だとまだ高い。ちなみにもう1本好きなルクス50mmの2ndも値上がり過ぎ。一方、旧ASPHのSummicron 35mmが一番適度なのはわかってるんだけど、最近ちょっと値段が上がっているのと、最後にこの旧ASPHの美品を使ってたのが半年くらい前なんだけど、実は写りは普通だなと思ってなんとなく複雑な気持ちだった。いやぜんぜん良いと思ってる、個人的にも一番好きなレンズだし、使い勝手がよいのもわかってる。自慢じゃないがズミクロン35mmは新旧ASPHも7枚玉も使ってるので、軽さなら7枚玉、うつりなら新ASPH、両方のいいとこ取りは旧ASPH。ズミ35mmは普通によく写るのがいい。だけど、今回、おそらく人生で最後?になるかな?そこは断言できないけどw(ほんとになw)、最後に自分が本当に気に入って長く使えるものを、と考えたとき、自分としてはこのクセ玉で有名な、そして不相応に値段が上がってしまっている、球面Summilux 35mmを選択しました。まさか人生で2回もこのレンズ手に入れることになるとはね・・・。自分の中の勝手なジンクスですが、私が2回手に入れた機材は「本当に良いモノ」というね(笑)。ちなみにライカM4は3台目です、どや。

今回重視していたのはとにかく軽さ。そのためズミクロンと悩んでいた。今度こそラフに気取らず使いまわそうと思っているので美品でなくてもいい。でも十分に写る、そんな組み合わせ。一瞬、値段も安いしElmar 35mm f3.5でもいいかなとも思ったけど、これも3ヶ月くらい前まで状態の良いものを持っていて経験済みで、おそらくスナップレンズとしては最高の選択の1つと理解している。しかしそれは他の常用レンズを数本持っていた上での話、とも理解している。唯一所有するメインレンズとしては心もとない。軽くて小型で・・・それでいて天邪鬼なもの、となったとき、球面Summiluxしかないじゃない?

しかしライカM4+球面ルクスの組み合わせは最高にクールだと思っている。自分がクールではないことはわかった上で。球面ルクスは最近もっとも値上がりが激しいレンズの一つ。しかしこのタイミングでメンテ済みで安価なものに出会ってしまった。私はこれまでの経緯から、オールドのライカレンズはお宝の取り合いなのだと明確に理解しているので、即断即決。おそらくあの値段でこのレンズを手に入れた最後の日本人だと自負しています。安かった理由はあれどレンズをみて、写りに影響がないと判断しました。ほか動作もまったく問題なし。メンテしたのが、以前からよく知っている信頼できるお店だったのも判断材料。掘り出し物だなと思いました。実は元々はこのレンズだけ手に入れる予定だったのですが、その場にあるM3、M2などを何台か触らせてもらっていて、そこに1台だけM4があるのに気づきました。おそらく状態は並品でしたが、これもレンズと同じ店で動作確認済みのもの。外観は傷多めで、これまで手にしてきたボディよりは古ぼけて見える。使い倒すにはこういうのがいいのかな・・・と思って手にとって空シャッターを切ったとき、巻き上げの感触がかなりスムーズでシャッター音がとても良かった。ファインダーの汚れは多少あるものの、これは・・・。そこでピンときて一緒に購入。M4と球面ルクスを同時買いという・・・。何やってんだと思いますよ、ほんとに。

ちなみにこのシャッターフィール、私はニヤリとしました、同じ店で半年前にライカM4をフルOHして使っていましたので。あの感触の良さは手に残っています。定かではないですが、シャッターブレーキ程度の調整はしてるんじゃないかなと思いました(以前別の業者さんで、目の前でブレーキ調整をしてもらうのをみました)。とにかく全体的な動作はスムーズ。外観のスレから過去に何度か手が入っているのはわかりましたし、こなれた機材の方が使いやすいかなと。

いまは入手からしばらく経っていますが、M4の動作はスムーズですしレンズも写りがよいです。M4は持病のシャッター幕外れがトラウマですが、外観のヤレ具合から過去にそれは経験済みのボディではないかと期待しています。一度メンテされていればそうそう起きないだろうと。

M4+球面Lux35mm/初夏の伊豆高原にて
クセ玉ですが絞るとシャープです

ここからは余談。購入時、それまであまり触ったことなかったM3を何台か触らせてもらいました。その中に有名店「Y」でメンテナンスしたM3があり、店員にすすめられて触りましたが、巻き上げのスムーズさが段違い。なにあれ?すっごいクリーミーな巻き上げ動作でした。20万円台半ばと、相場よりは少し高いですが、あれは一度は触ってみていただきたい。

あと最後に余談。ライカQ2、なんで手放したかですが、使い勝手とか写りは言わずもがな最高なんだけど、まぁデジタルなので、壊れたらアウトだなと思いました。モノはいつか壊れるんだけど、大事に使えばいいじゃんとも思うんだけど、やっぱりラフに扱って壊れにくそうなのはフィルムMって思いました。まぁ出世してまた買えばいいのよ、こんなもんは。やったるわい。

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