私とライカとSummilux

おそらく、私はかなり危うい道を歩いている。

ちょっと前に書いた記事では、家庭の事情もあり、もう高いライカボディやらライカレンズやらは買えないと言った。そして最後の最後にこれだけは許してって感じでM10-Pを購入し、これで生まれてくる子供を撮るぞと息巻いていた。いまでも値段思い出すと胃が痛くなる・・・。そんな無理して買うなよ、は最高の正解ではあるが、正直ちょっとがんばれば買えてしまう程度には中堅サラリーマンをやっている。まだかろうじて子供の誕生前でもあるのでなんとか購入可能だったのもある意味不幸だ。一方で喜ばしいことに子供は順調に育っており、秋には誕生するのである。おそらくもうカメラがどうした、レンズがどうした、などとやっている余裕はないのであろう。

少しさかのぼって4月のこと。

フォクトレンダーレンズを装着したM10-Pと共に、諸用にて九州まででかけた。情勢を考慮して、そんな派手に出歩いたわけではないが、家族の用事で多少は外出したし、それなりに観光はできた。まぁせっかくきたのだからと、密は避けつつ、歩いた場所は写真を撮ってまわった。

変な撮り方をするつもりは無いが、やはり静音性の高いM10-Pは非常に使いやすい。シャッターはほとんど無音だし、撮れる絵もまさにライカの陰影。地方のバスや電車の中からも風景を撮った。やっぱりライカで撮っている。それもデジタル。この質感、この重さ。これに魅了されると人生を持ち崩すことになる、そう私のようにね(往年の洋画スターのような表情で)。とはいえ、心の隅のほんの小さな部分ではあるが、正直やっぱりライカレンズで撮りたかったなという気持ちがないでもなかったが、それでもフォクトレンダーのレンズは非常に写りがいい。使い勝手もサイズ感もとてもいい、まったく問題ない、とても気に入って使っていた。

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そこから2ヶ月ほど経つわけだけど、私の手元にはM10-Pはない。自分でも流石にちょっと頭がおかしいなと思います。じゃぁM10-Pがどうなったかというと、「ライカQ2(Leica Q2)」を購入しました。

Leica Q2

自分でも引いてしまうのだけれど、一応の(非合理な)合理性はそこにあって、その一方で確かにフォクトレンダーレンズ1本分程度のお金の捻出が必要になったという理由もあった。とても悩ましい判断をしなければならなかった。自分を説得するための考え方はこうだ。要するに、子供が生まれてくれば移動するにも抱っこするなり、ベビーカーなりで動きにくい、夫婦で移動しててもおそらく写真など撮ってる暇があるわけがない、それであれば、AF付きのライカレンズ+ライカボディがセットになったライカQ2、それもM10-Pボディを手放すことでほとんどそのまま等価交換できる機材、これを手に入れるのはある意味正解だろうと・・・。

なるほど確かに、と自分でも思う。

ただし人間は、必ずしも合理的な解答に納得するわけではありません。ここからが本当の狂気なわけですが、実はすでにライカQ2は手元にありません。(お前、ほんとに狂ってるな・・・普通に引くわ・・)。

ライカQ2の利点を上げるのはもはや無粋というものですが、確かにあのサイズ感で、しかもまったく手抜きのない28mm Summiluxレンズと5000万画素近くの最新のセンサーがついて、その上ライカでマクロ撮影、AFもついている・・・その上、ボディの作りもよく、廉価版な感じがしないさすがの作りの良さ、高額でありながらヒット商品になったのはうなずけます。

ライカQ2を多くの有名カメラマンやガジェット系タレントが絶賛するのはとてもよくわかる。まったくスキがない。M型ライカに抱いているちょっとした不便を、Qシリーズはとてもよく埋めてくれています。いろいろ調べましたが、どこへいっても絶賛ですし、その理由も痛いほどよくわかる。私も同感だからです。

ただし、それは他にM型ライカをデジタルもフィルムも持っていた上で、ライカQ2を持っていることが前提になるような気がしました。普段、M10やフィルムのMPで撮影してて、だけれども、今回の旅行は身軽に行きたいからQ2もってこうかな、とか、今日は友人とちょっとした集まりだけど、M型もいいけど、夜の室内だし気軽にQ2でいいかな、とか。

私は幸運にも、フィルムMのボディ数種、デジタルのM-P、M10、M10-Pなど、まぁおよそ普通のサラリーマンが持つにはちょっと贅沢すぎない?と思われる分不相応なものを入手して一通り体験してしまっているので、ライカQ2を持たされても、もはや普通のデジカメでしかない。デジMのあの重さ、ある種の使いづらさも愛おしい、そしてそれ以上にフィルムMのあのシャッターフィールが恋しい。もうこれは病(やまい)の類だと思います。末期だし、病の完成形でもある。

しばらくはライカQ2でとても満足していました。シャッターの静音性、かなりの高解像度、レンズも大好きなSummilux、そしてボディがかなり軽いので普段の持ち歩きがとても楽でした。いざとなれば動画も取れる。バッテリー持ちもよいし・・・。それにクロップ機能も使い所で楽しい機能です。

ところがある日、自分の心の内に正直になってみる必要があるのではないかと思いました(←こういうところが頭おかしい気もしている)。なんだか満たされない(頭おかしいからw)。でも、わかってる、秋には子供が生まれるし、大きな機材は使えないし、アレコレ持ってたって使えない、それにAFないと子供連れでスナップなんてできないよ・・・それもわかってる、全部わかってる・・・。

自分は一番いい選択をしてる。

・・・でも、同じ子供を撮るにしても、なんとなく消費される写真じゃなくて、残る写真が撮りたい。20年、30年たったとき、俺の息子が、「親父がいい加減だったからそこまで裕福じゃなかったけど、不相応な高いカメラで俺のこと撮ってたっけ、フィルム現像まで自分でやって、随分面倒なことまで自分でやってたな、趣味はいいけど変わった親父だったな」とか、俺は息子にそんな風に思われるのかな、おそらく、そう思われたいと思っている。

何も残せやしない、人並みのものも、世間的な評価としても、何かを残せる人間じゃない。デジタルが残らないとも思わない、けどやっぱり自分はフィルムなんだと思った。理由を考えて、幼少期はフィルムが主流でその記憶があるからとか、自分が天の邪鬼だからすぐ人と違ったことしたがるとか、いろいろ考えるんだけど、

俺、フィルムで写真残したいのよ。

もう理屈でもないし、ただのわがまま、ただのブランド好きって言われても仕方ない、さんざん高いライカレンズ隠れて買って、それでも時々満足できないこともあって、やっぱデジタルの方がきれいだしなとも思ったけど、過去の写真見直してたら、たまにすごくいい写りしてるんだよ。フィルムとライカレンズ。人物は本当に限られた人しか撮らないけど、人生でほとんど唯一、親連れて旅行にいったときに旅館の部屋でライカM4のセルフタイマーで撮ったやつ、嫁と俺とオカンで3人並んでる写真とか、嫁の妹の息子さんみにいったとき、旦那さんが抱いてる写真とか、別に展示するようなもんではないけど、ぜんぜん違うんだよ。iPhoneのがきれいに写るのは自明なんだけど、それでもぜんぜん違う。

それで、俺は、これは性(さが)とか業(ごう)とかなのかもしれないけど、「ライカM4(Leica M4)+Summilux 35mm f1.4 球面/2nd」を入手しました。(えぇ!ww)え?あたま?おかしいよ?それが?

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結局、ここへ戻ってきました。

ボディはライカM4一択、もしくは次点でM2あたりで考えていたけど(35mmメインなので)、レンズは悩みました。汎用性を考えるとSummicron 35mmだけど、もう一度使ってみたい7枚玉は現在高騰している。しすぎだと思う、せいぜい25万がいいところだと思う。かといって、自分が大好きなSummilux 50mm ASPHは運良ければ30万くらいで入手できるが、50mmである点と、店舗だとまだ高い。ちなみにもう1本好きなルクス50mmの2ndも値上がり過ぎ。一方、旧ASPHのSummicron 35mmが一番適度なのはわかってるんだけど、最近ちょっと値段が上がっているのと、最後にこの旧ASPHの美品を使ってたのが半年くらい前なんだけど、実は写りは普通だなと思ってなんとなく複雑な気持ちだった。いやぜんぜん良いと思ってる、個人的にも一番好きなレンズだし、使い勝手がよいのもわかってる。自慢じゃないがズミクロン35mmは新旧ASPHも7枚玉も使ってるので、軽さなら7枚玉、うつりなら新ASPH、両方のいいとこ取りは旧ASPH。ズミ35mmは普通によく写るのがいい。だけど、今回、おそらく人生で最後?になるかな?そこは断言できないけどw(ほんとになw)、最後に自分が本当に気に入って長く使えるものを、と考えたとき、自分としてはこのクセ玉で有名な、そして不相応に値段が上がってしまっている、球面Summilux 35mmを選択しました。まさか人生で2回もこのレンズ手に入れることになるとはね・・・。自分の中の勝手なジンクスですが、私が2回手に入れた機材は「本当に良いモノ」というね(笑)。ちなみにライカM4は3台目です、どや。

今回重視していたのはとにかく軽さ。そのためズミクロンと悩んでいた。今度こそラフに気取らず使いまわそうと思っているので美品でなくてもいい。でも十分に写る、そんな組み合わせ。一瞬、値段も安いしElmar 35mm f3.5でもいいかなとも思ったけど、これも3ヶ月くらい前まで状態の良いものを持っていて経験済みで、おそらくスナップレンズとしては最高の選択の1つと理解している。しかしそれは他の常用レンズを数本持っていた上での話、とも理解している。唯一所有するメインレンズとしては心もとない。軽くて小型で・・・それでいて天邪鬼なもの、となったとき、球面Summiluxしかないじゃない?

しかしライカM4+球面ルクスの組み合わせは最高にクールだと思っている。自分がクールではないことはわかった上で。球面ルクスは最近もっとも値上がりが激しいレンズの一つ。しかしこのタイミングでメンテ済みで安価なものに出会ってしまった。私はこれまでの経緯から、オールドのライカレンズはお宝の取り合いなのだと明確に理解しているので、即断即決。おそらくあの値段でこのレンズを手に入れた最後の日本人だと自負しています。安かった理由はあれどレンズをみて、写りに影響がないと判断しました。ほか動作もまったく問題なし。メンテしたのが、以前からよく知っている信頼できるお店だったのも判断材料。掘り出し物だなと思いました。実は元々はこのレンズだけ手に入れる予定だったのですが、その場にあるM3、M2などを何台か触らせてもらっていて、そこに1台だけM4があるのに気づきました。おそらく状態は並品でしたが、これもレンズと同じ店で動作確認済みのもの。外観は傷多めで、これまで手にしてきたボディよりは古ぼけて見える。使い倒すにはこういうのがいいのかな・・・と思って手にとって空シャッターを切ったとき、巻き上げの感触がかなりスムーズでシャッター音がとても良かった。ファインダーの汚れは多少あるものの、これは・・・。そこでピンときて一緒に購入。M4と球面ルクスを同時買いという・・・。何やってんだと思いますよ、ほんとに。

ちなみにこのシャッターフィール、私はニヤリとしました、同じ店で半年前にライカM4をフルOHして使っていましたので。あの感触の良さは手に残っています。定かではないですが、シャッターブレーキ程度の調整はしてるんじゃないかなと思いました(以前別の業者さんで、目の前でブレーキ調整をしてもらうのをみました)。とにかく全体的な動作はスムーズ。外観のスレから過去に何度か手が入っているのはわかりましたし、こなれた機材の方が使いやすいかなと。

いまは入手からしばらく経っていますが、M4の動作はスムーズですしレンズも写りがよいです。M4は持病のシャッター幕外れがトラウマですが、外観のヤレ具合から過去にそれは経験済みのボディではないかと期待しています。一度メンテされていればそうそう起きないだろうと。

M4+球面Lux35mm/初夏の伊豆高原にて
クセ玉ですが絞るとシャープです

ここからは余談。購入時、それまであまり触ったことなかったM3を何台か触らせてもらいました。その中に有名店「Y」でメンテナンスしたM3があり、店員にすすめられて触りましたが、巻き上げのスムーズさが段違い。なにあれ?すっごいクリーミーな巻き上げ動作でした。20万円台半ばと、相場よりは少し高いですが、あれは一度は触ってみていただきたい。

あと最後に余談。ライカQ2、なんで手放したかですが、使い勝手とか写りは言わずもがな最高なんだけど、まぁデジタルなので、壊れたらアウトだなと思いました。モノはいつか壊れるんだけど、大事に使えばいいじゃんとも思うんだけど、やっぱりラフに扱って壊れにくそうなのはフィルムMって思いました。まぁ出世してまた買えばいいのよ、こんなもんは。やったるわい。

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もう終わりにしようか、ライカM10-P。

文章を書くのはそれほど得意ではないが、なんとなくだらだらと長文を書いてしまう。

自分のことを他人にわかってほしくて、人と会話したときに必要以上に前のめりに自分語りをしてしまうのは、コミュニケーションが苦手な人にたまに見られる傾向だ。ここでも、そんな自分の孤独な断片を見せてしまっているのかもしれない。

Leica M10-P

ツイッターなどのSNSでは寡黙な方だ。なんとなく自分を見せるのが恥ずかしい。人からたやすく見透かされてしまいそうな気持ちになり、うまく表現できない。それで撮った写真を黙ってアップし続けていたりする。どちらかというと、人と馴染めない態度はツイッターでの方が素に近いかもしれない。

ツイッターでは、写真界隈を中心にフォローさせていただいている。ありがたいことにそれなりに目立った活動をしてる方からもフォローいただけたりしている。界隈での流行や話題にもそれとなくついていけているが、多くの人の悲喜こもごもも垣間見えたりする。最新の高額機材を安々と購入する人、写真展で賞を取る人、人から認めて欲しくてでもなかなか結果がでない人、海外在住でフォトジェニックな景色の中で暮らしている人、多くの人がおかれた立場でままならない我が身に一喜一憂しながら生活している。機材自慢は人によっては思うところがあるかもしれないが、「いいね」がもらいやすい。自分もたまに手持ちの機材を上げてしまったりする。他人の自慢は羨ましくもあるが、人の幸福を素直に祝福できるくらいには心の余裕を持っておきたい。

最近、私は機材をおおっぴらにアップするのをやめた。以前から自分の人生や生活や家族を脇へおいて、なかば隠れて機材を購入してきた。本人たちに自覚はなくとも、遠回しには家族に苦労をかけている。自分にはずっとその後ろめたさがあった。このブログで紹介してきた購入機材も多くは家族には内緒で購入し、恥ずかしいことだが支払いの整合がうまく取れずに手放してしまうものがほとんどだ。そのあたりを茶化して「ビョーキ」と言って笑ってきたが、あながち間違ってはいない。気づかないうちに深刻なところまで来てしまっているのかもしれない。自分を理解してほしい、自分がここにいることをわかってほしい、自分の美観が間違っていないことをわかってほしい、自分に見えているものが美しいものだとわかってほしい、私がここにいることをわかってほしい。私に欠けているのは本当の意味での「自分」なのかもしれない。それに今回の記事は大いに矛盾している。

もう終わりにしようか。

「ライカM10-P(Leica M10-P)」を購入しました。

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以前、ライカM10を手に入れたときに、「P」なんてシャッター音の静音性くらいでしょって感じのことを言ったような気がする。目立った機能的な違いはあまりない。改めてここでM10-Pの機能レビューやメリット・デメリットなどには触れない。

妻に内緒であれだけレンズをとっかえひっかえしておいてなんだけれど、久々に胃がキュっとなるような値段だ。オペレーションを間違うと人生とか、家庭を失いかねない。またライカM10でもよかったんじゃないかとも思った。この選択の違いで10〜15万も値段が違う。ただライカM10を使っているときにシャッター音が気になっていたのは確かだった。場所によっては静音性がどうしても欲しかった。そのために本当に失いたくない機材も手放した。おそらくどれももう手に入らない代物。そしてようやく(憧れの?)ライカM10-Pを手に入れた。

でも、しばらくは表に出せなかった。入手の前後、妻とお金の支払いで揉めた。まったく別の支払いについてだが、そんなタイミングでこの機材の購入を言い出せるはずがなかった。

俺はいったい何をやってるんだろう。

もうこんなことは懲り懲りだと思った。それでも写真は諦められなかった。なんとかしようと考えると、他の機材をすべて放出して、M10-Pだけ残す方法しかなかった。これで当面のお金は工面できた。しばらくは支払いを気にしなくて済む。自分はただの、圧倒的に凡庸な、サラリーマンだった。ネット上でみかける、数十万もするレンズをいくつも買えてしまうお金持ちとは違う。もうやめよう、私は妻とまったり楽しく生きていければそれでいい。周囲の知人、縁者より晩婚だった自分にとって、幸せは単純にそれだけでよかった。それすらも維持できなくなる。

一方でこうも思う。別に浮気してるわけでも、隠れてキャバクラや夜の店で遊んでるわけでもない。カメラで薄着の若い女の子ばかり撮ってるわけでもないし、そこまで悪い趣味だとは思っていない。むしろ街スナップは、街歩きが好きな夫婦にとってはとてもいい趣味だと思っている。

でも、そのコダワリの機材とやらで何を撮っている?

近所の道とか草花とか看板、街角だろう。それって家族とか人生とか天秤にかけるようなものか?無くたってどうってことないだろう。もう嫌だ・・・。妻のかなしい顔をみるのも、隠しごとの後ろめたさも、胃の痛くなる支払いも、もう嫌だ・・・だから終わりにしよう。

もうひとつの幸せ

ライカM10-Pは休日、妻が仕事で不在のときに使った。妻と一緒のときはまったく使わなかった。そのときは未練たらしく手放さずにいたライカM4を使った。OH済みのかなり快調な機材だ。とはいえM10-Pが使えずモヤモヤしていた。その頃も、私は毎日お金の計算をしていた。いつも嫌な気分になったが、アレとアレを売ればなんとか夏のボーナスまでは支払いが持ちこたえるだろう・・・。ライカM4は最後の砦だ。まだ手放したくない。そんな見積もりを行っているとき、家族がもうひとり増えそうなことがわかった。妻の妊娠である。

増えそう、と書いたのは、実はちょうど1年前、非常事態宣言が出され世間が今よりピリついていた頃、私と妻は流産を経験した。そのため慎重になっている。この執筆時点では安定期はまだ先だ。柔らかい空気が桜の花びらを載せて漂いだす頃、妻のお腹は少しだけ膨らみ始めてきており、実感こそなかったが、自分の人生の明るく前向きな側面を想像して将来を夢見ようとしていた。秋にはとうとう親になるのか、生まれてきたら最初にライカで撮ってやろう、名前の候補は個性を出しつつもキラキラネームにならないように・・・。ある日、妻は検診へ出かけたが心拍が確認されることはなかった。心底能天気な私は妻と泣いた。

そんなことがあったから、今回の妊娠は緊張を持ちつつも、心から嬉しかった。今度こそ君を幸せにしたい。だから、私は完全に理解した。もう遊んでる場合じゃないんだな。

(記事公開時点では、喜ばしいことに心拍は無事確認でき、現在も成長中です。そこらに子供らはたくさんいるので、子供ができ、成長するということが、これほどまでに奇跡の連続なのだと、この歳になって私は知った。)

足りない自分

以前からフィルムの値段が目に見えて上がっていたし、去年はフィルムに入れ込み過ぎてフィルム代、薬品代、その他機材、消耗品などかなりの額を使った。「フィルムの自家現像をやってます」。単純に自分の個性を提示できる名刺のようなものが欲しかった。単なる自己顕示欲やファッションでしかなかった。それが何になったのか?何にもならなかった。大切な人を泣かせる、原因になっただけ。おそらくここでも、なんとなく自分を誰かにわかってほしかった、そのための活動だった。結局私に足りなかったのは「自分」だったのだろう。

私はさらに機材を手放した。かなりの値段をかけた機材、使用感も最高、おそらくもう手に入らない。でも、これ以上いらない。そしてライカM10-Pとコシナのフォクトレンダーレンズのみになった。昔はじめて買った単焦点もVoigtlanderだったし、使用感、デザイン、写りも好きなメーカーだった。純正ではないというだけの話。プアマンズ〜とか言ってるやつは相当野暮でしょう。そこらのレンズと比べたら高くさえある。別にドイツ製とか見栄でしかない。いくつも高い名玉を使ってきた身からすると、変な癖や個体差があるより、かえってこっちの方が使用感、写りはよかったりする。今度は機材に撮らされない自分を見つけることにしよう。

しばらくはこのM10-PとVoigtlanderのレンズで撮影することにする。そして今度こそ君が生まれてきたらこれで写真を撮ってやろう。はやりのニューボーンフォトだ。人生のファーストショットがライカなんて、なかなかお洒落でしょう。でも、お金に困ったらすぐに手放して君のために使うことにするよ。別にこだわりも未練もない。今までとは違う幸せをみてみたい。自分はかなり贅沢だと思う。

正直、みっともない話だなと思う。単純にいい年してしっかりしてない自分をさらしている。恥ずかしい。僕は趣味人だからね、といって軽く流すこともできるかもしれないが、なんとも形容しがたい気持ち。腹をくくる瞬間はこれまでも何度かあった。今回もそうなんでしょう。私はそれなりに努力はするので、きっと乗り越えられる。

一方で、家買ったり、結婚したり、旅行いったり、別にいまだに破綻せずに生きていけてるんだからわりと頑張ったんじゃないか。ない「自分」なりには生きてこれたかもしれない。

フィルム写真は、薬品やフィルム、来月の遠出などもう少し撮りたいものがあるので、しばらくは続ける予定。ニューボーンフォトもフィルムでも撮りたいし、全部整理ってわけにはなかなか行かなかった。そのために小型のフィルム機を手に入れたんだけど、それは次の記事で。この期に及んでフィルムカメラ買ってるというところに戦慄を覚える(笑)。

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