エルマーをめぐる冒険

最近、手元のフィルムMが2台(M4、M6)ともに入院してしまい、その治療費に莫大な費用がかかっていることもあって(支払いこれからだし、というかもう1台M4買える金額だし・・)、あまりいろいろと購入欲がでていなかったのですが、「Elmar 35mm f3.5(1941年製)」を購入しました。

elmar 35mm f3.5 + Leica CL
elmar 35mm f3.5 + Leica CL
Leica エルマー L35mm F3.5 クローム [ Lens | 交換レンズ ]

最近、ライカレンズはありがたいことに現行レンズをメインに使っており、オールドはあまり触れていませんでした。以前はエルマーや沈胴Summicron 50mmも使っていましたが、いまさらオールドレンズもなぁ・・・という感じでした。

しかし現行レンズを一周して行きついた境地は「人はエルマーにはじまりエルマーに終わる」でした(笑)。たぶん頭おかしい・・。自分も最初にエルマー50mmを使ってライカの写りに感動したこともあり、またあのレトロで作りのよいレンズに触れてみたいと思うようになってしまいました。正直、カメラ、レンズ趣味の一番怖いところ。ほんと終わりがない沼です。バカみたいって思ってしまう。

今回は手に入れたElmar 35mmの紹介をしたいところですが、過去のエルマー(主に50mmですが)について思い出を語っていきたいと思います。こういう書き出しだと長いかも・・・。

1本目のライカレンズ Elmar 50mm F3.5

本ブログの一本目の記事で、はじめて購入したのがバルナック型のライカIIIfだったという話をしました。最初は安い東欧レンズ、確かジュピター8とか、別のだったか・・を使っていましたが、どうしてもライカレンズを使ってみたくなりすぐにエルマー50mmを入手しました。実用レンズといいつつ、後玉の隅に傷が入っており、特に逆光時に変なフレアが入る状態でした。部屋を探して、当時1〜3本目に撮影したフィルムを発見。

バルナックで撮影した1本目のフィルム。

当時、天候がわるく室内で試し撮り。F3.5がどうのとか、露出の仕組みとかまったく理解していなかったのでかなりアンダー。露出やF値も適当、それでも開放なら行けるかと思い、夜でも躊躇なく撮影。とはいえちゃんと写っていることに驚いた。このレンズは後玉の隅に傷があり、端っこに乱れたフレアが出る。2015年頃の話。余談だがこの5年で使った金額はあまり考えたくない。普通に新車が買えてしまう、恐怖でしかないw。ともかく数年ぶりにこの写真を見直して、やっぱり質感がいい・・・。

そして2〜3本目に撮ったフィルム。1本目の現像から翌週あたりの日付だったので、そう判断した。ここで自分がライカにハマってしまう写真が撮れた。なんてことない近所のスナップだが、個人的にとても好きな写真。フィルムの1枚目、First of roll。仲睦まじい鳩2匹。2枚目はちゃんとフォーカスしている。相変わらず左上に少しフレア(ゴーストといえばいいのかな)が出ている。

思えばこのあたりの写真が撮れてしまったので、ライカレンズの独特の魅力にハマってしまった。機材を手放しても、結局このときの感動、描写、質感に触れたくてまた手にとってしまう。

それからは休日に近所を散歩したり、代官山、中目黒などを撮影して歩いた。おそらくあの瞬間は都内でも屈指のおしゃれ野郎だったに違いない(笑)。なんていってもその頃には純正のユニバーサルファインダー「VIOOH」なども入手、レンズにも純正のフードをつけて、バルナックのフルアーマーを下げて都内を歩いていた。当時はまだ若い子でフィルムカメラを下げている子は少なかった。日中であれば中速シャッターで何も考えずに撮ることができた。

当時このコンビで撮り歩いていた

2本目のエルマー50mm

バルナックはその後、金策のためレンズごと手放してしまう。紆余曲折あってライカM6を入手した。最初はフォクトレンダーのレンズなど使っていたが、やはり純正のものが使いたくて再度エルマー50mmを購入。これは店舗で3本くらいの中から適度なものを選んだことで状態はよかった。しかしこの頃から頭がおかしくなり、オールドレンズのF値設定の使いづらさとか、もっと現代のレンズが使ってみたいという気持ちが高まり、すぐに手放してしまう。一方では沈胴SummicronやSummicron 50mm 3rdあたりを使っており、特にSummicronの第3世代は現代的なシャープな写りだったこともあり、オールドレンズは流石に見劣りしてしまうように感じて、すぐ手放してしまった(ズミクロンについては別途ズミクロン遍歴に記載しています)。

3本目のエルマー50mm

デジタルでα 7IIやライカM-P Typ240あたりを使うようになってまたElmar 50mmを一度入手しています。なんだろう、当時の最新デジタルを使って、比較的、最近の(半オールド?)レンズを使って撮ると、普通に写りすぎるくらい写る。それに飽きてきたのかもしれない。贅沢がすぎてデジタルでもオールドレンズの味みたいなものを試してみたかったのか・・・。ここで入手したElmarは噂のレッドスケール、赤エルマーです。外観、レンズの状態もとてもよかったのですが、かなり格安で入手できました。ただこの時期になると、気持ちがもっと現行の高性能レンズへと行ってしまっており、SummicronやSummilux 50mm(2nd)など経験して、オールドはF値の変更も面倒だし・・もっとシャープに・・・などと考えて手放してしまいました。今思うとかなりもったいなかったのは、ほとんど試写くらいで放出してしまった。・・・ビョーキ真っ只中だったけど、今思い出すとそのあともっと症状重くなってるんですよね・・・。

そしてエルマー35mmへ

それからしばらくはオールドレンズには手を出しませんでした。現行レンズ集めに躍起になってそれどこじゃなかった。そして今回、エルマー 35mm f3.5を入手しました。1941年製で、今年ちょうど80歳。奇しくも自分の母親と同じ年でした。別にそこで愛着がわくわけではないけれど。まずは外観から。(前置きなげぇな・・・)

非常に軽量・コンパクトで取り回しやすい

現在M型がすべて出払っているため手元にはライカ CLしかありませんが、これがまた、「コンパクト×コンパクト」で大正解という感じ。最近はずっとこのコンビで撮影していますが、もうこれでいいんじゃないかなと思わせてくれる。暗いF値に目をつぶればこれほど有用なレンズはないのではないか。それに写りも定評のあるエルマーです。ある程度シャープに、それでいて程よい余韻を残す写り。最近は現行レンズばかり使っていたので、全体的にシャープなものに慣れていたのですが、どちらがよいということでもなく、たまにはこういう肩の力が抜けた描写もよいと思いました。それと、久々にこの年代のレンズに触れて、こんなに金属の質感よかったっけ?こういう質感の良さもライカのオールドレンズが好まれる理由の一つですね。

あと過去の経験からある程度、夕方や夜でも写るのはわかっていましたが、この35mmもある程度いけます。夜メインの撮影はしづらいでしょうが、ある程度光源があればそれなりに写ります。モノクロでも早く試したいのですが、最近カラーばかり撮っていたのでまだ試していません・・現像が面倒でw)

以下、最近の作例をいくつかご覧ください。大体フィルムはKodak Gold 200です。

上記が購入した帰り道に撮った一本。新宿の駅構内から郊外の夕焼けへ。だんだん空が暗くなりかけて、どうかな?撮れるかな?と思いましたが、杞憂でした。フィルムの粒状感はでていると思いますが、いい雰囲気で撮れています。以下、その後に撮ったものも置いておきます。

上記は昼に近所を散歩したときのもの、または早朝の散歩で撮ったもの。逆光だとやはりゴースト、フレアは出るのですが、角度によってはうまく光を捉えることができる。このレンズ、写るかどうかで言えば圧倒的に写るし、とてもよい描写をします。確かに現行のSummicronやSummiluxとの比較はナンセンスですが、そういうシャープさではなく、十分なコントラストを持ちつつ、背景やボケ、無限のときの対象が自然とふわっと写る感じは目視でモノを見るのに近くてあくまで自然。

オールドレンズは集めだすとキリがないし、それに状態がよいものを集めるのも困難ですし、トライエラー(何度も買って売ってを繰り返すことw)が求められます。とても困難な道でありながら沼に落ちる人が絶えないのも頷けます。それにライカのオールドレンズのよく写るのにコンパクトです。だからボディが最新のデジタルになっても人気があります。最新センサーでフィルムとはまた違った描写を楽しめるのはいいことですね。そこがこの沼が深くて怖いとこでもあるんですが・・w。

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ライカCLふたたび。

突然ですが「Leica CL(ライカCL)」を手に入れました。

leica_cl_front
Leica CL

といってもAPS-Cデジタルの方ではなくて、50年近く前に発売されたフィルム機になります。以前このブログで「Leitz Minolta CL(ライツミノルタCL)」について触れていますが、外観、機能ともにそれと同じものになります。今回のものはライカ社が海外で販売していたバージョンで、ロゴが「LEICA CL」とシンブルに記載されています。

Leitz Minolta CL、LEICA CLについて簡単に触れますと、70年代、日本のカメラメーカーの一眼レフの躍進もあり、レンジファインダー式カメラも時代遅れとなり、経営が傾きつつあったライカ社が日本のカメラメーカーMINOLTAと提携して作成したコンパクトカメラです。ライカ社が設計し、製造をMINOLTAが行い販売していました。製品名称は日本版と海外版で上述のように異なりますが、73年から数年ほど販売されていました。この前後にライカ社もいろいろあったので、仕様としても製品コンセプトとしても過渡期の製品と言えるかと思います。このあたりの歴史や製品ラインナップの流れを見ると多くの視点から語れるためすごく面白いのですが、まぁ普通は興味ないですよね・・。

コンパクトなライカCLですが、なかなか凝った仕様になっています。ライカ社がはじめてカメラに露出計を搭載したのはライカM5からですが、その仕様を踏襲しコンパクトサイズにした野心的な作品。個人的に思うのは、メインのM型とは別軸でうまくこの路線を次世代に引き継げなかったものかと悔やまれます。サイズがM型より一回り小さくなった上に距離計、露出計も搭載していて、それで伝統的なMマウントが使用できます。この仕様ほしいんですよ。他に人気の小型カメラといえばローライ35ですが、よく惜しいと言われるのは距離計がついていないこと。露出計よりむしろ距離計をつけてくれと言われることもあります。カメラの機能は痛し痒し。しかしこのライカCLは小型な上に距離計も露出計もついている。しかもMマウント。これは完璧。とはいえ、小型化したことで微妙に距離計の精度はそこまで高くないとのこと。専用レンズとしては40mmのレンズが用意されている。

また露出計の仕様が独特で、内部に巻き上げと同時にアーム状の枝が出てきてそこに受光セルが設置されている仕組み。これにより一部、レンズ後部が長いレンズは使えないなどの制約がある。それに仕方ないことですが、現在手に入る機体の多くが露出計が壊れている。

さて、いつも通り前置きが長いですが、自分が手に入れた個体は、外観こそ経年なりの傷がある状態ですが(巻き上げのプラが割れて補修されています)、露出計が動きました。以前持っていたLeitz Minolta CLも露出計は不動。当時は怖いもの知らずで感露出で対応していましたが、いつまで正常動作するかはさておき露出計が動作するのはとても便利。

leica_cl_summicron35
Summicron 35mmを装着したところ

とりあえずは露出計をテスト

最初、入れてみたのは常備していた1.5Vのボタン電池(P625Uという形が特殊な電池)。この場合、電圧的に露出がオーバーしてしまうため、人力で補正して撮影しましたが、結果はアンダー目でした。ライカCLやライカM5は1.35Vのマイナーな電池を使うため(現在は廃盤の電池)、現在主流の1.5Vのものだとコツがいります。そのため関東カメラさんから出ている変換アダプターをあとで購入しました(これ買うの4回目くらいだよ・・)。これで1.35V変換になるため試したところ、露出精度も問題なく使えることが判明しました。これは非常にラッキー。

またCLは、ライカ5と同様にファインダー内でSSと露出が確認できるのでファインダーから目を話すことなくSS変更などが行え便利です。最初、久々にこのタイプのファインダーだったのでクセが掴みづらく、失敗写真を数枚出しましたが、今は慣れてきました。しかし適正露出でCLが使えるのは結構レアなことなので、これはとてもありがたい。

40mmレンズはもっていない

現状の使用レンズはSummicron 35mm ASPHです。CLのブライトフレームは基本40mmですが、35mmだとそこから一回り大きい範囲が撮影されることになります。しかしそこまで厳密にフレーミングしないため、このあたりはあまりこだわりありません。また意外だったのはファインダーがきれいなこと。この年代のカメラはこれまで何台か使ったことありますが、流石にOH済とかでなければファインダー汚れは多少あるのですが、このCLはあまりチリもなくきれいです。ただし外側から覗くと、白いカビなのか劣化なのかわからないものがたくさん付着しており、きれいには見えないのですが・・・パット見は分かりづらいし、実害はないのでよしとします。

Leica_cl_finder
汚れやゴミがなくきれい(右側の縦ラインが露出計)
Leica_cl_finder2
側面のところが白く濁っているのがわかる

このサイズ、機能、これでいいのでは?

しかしライカCL、その出自からメインストリームから外されたり、M型の歴史の中に出てこないことすらあるのですが、小型でMレンズ資産を活かせて、機能もすべて揃っているということで、M型のサブ機として、またはお散歩カメラとしてとても重宝するカメラだと思います。実はM型ライカを2台も持っていながら、両方とも同じ時期に壊れてしまい現在O.H中。1台で使っていたとき、これが壊れたらサブがないということで2台目を手に入れたのにこんなことになろうとは。その経緯もあってCLを手に入れましたが、撮影結果をみても十分に使えることがわかりました。最初はピント甘かったりするかなと思いきやあまり問題なさそう。若干この機体はオーバーインフしているようですが、近距離でピントあってるので今のところ問題なし。確かにもう50年近く経っているため、露出計の精度や破損も怖いし、シャッターまわりも使ってて急に壊れる(修理中のM4がまさにそれ)ってことも想定できますが、しばらくは、少なくとも2台が戻ってくるまではCLをメインに使おうかなと思います。

leica_cl_with_lux50asph

少し今回冗長に書いてしまいましたが、ライカCLは書き出すと、縦吊りストラップのファッション性とか、いろいろ書きたいこと出てきてしまう。特に仕様としてはライカM5とCLくらいが、ライカでは珍しい仕様といこともあって書くことがたくさんあります。とりあえずは寝かしていたMレンズを活用できるようになったのが嬉しいです。

以下、少しですが作例を置かせていただきます。ほとんどがズミクロン35mmでの撮影。最近カラーネガ現像が非常に安定してきているので、そのあたりも個人的にはポイントですw。最近は3分25秒あたりで現像しています。